愛犬キャンディーが死んだ時は真夏だった。
死ぬ瞬間、娘たちが側にいてくれていたので、
私はその様子を会社にいながら、
スカイプで聞いていることができた。
もう抵抗力がなくなってしまっていて、
お尻の穴や眼の中にウジが湧き出していた。
それでもハムを半分食べたと言う。
ウジが湧いてしまったので、
動物病院で、薬草のお湯に入れてもらい、
下半身の毛を剃られてしまって、
痩せて、骨ばかりの姿だった。
キャンディー。
それでも娘たちの手を、ぺろりと舐めてくれたと言う。
19年も一緒に過ごしてくれた、
雑種混じりの柴犬のキャンディー。
何の薬も飲ませてはいなかった。
苦しかったんだろう。
乾いた口から浅い息をしていた。
それが突然、
「きゃああっ」と、大きな叫び声をあげた。
娘たちも私も、キャンディーっと大声で呼んだ。
キャンディーは弓のように背中を大きく
のけぞらせて、動かなくなってしまった。
眠り薬、飲ませておいてあげればよかった。
さぞ苦しかったことだろう。
湖から女神様が現れてわたしに問うた。
返信削除『あなたの願いを何かひとつ叶えてあげましょう。』
わたしは言った。
『死ぬとき、楽に死なせてください。苦しみはイヤです。』
『でも……』と女神様は躊躇した。
『苦しみには苦しみの意味があるのですよ…。』
『どんな?』
『自己の罪の精算です。』
『…いや、清算しなくてもいいです。ラクに死にたい。』
『しかし、イエス・キリストを見てごらんなさい。…彼はすべての人々の罪をあがなうために、十字架上で苦しまれたのです。』
『イエス・キリストを見習いたいとは特に思っていません。ラクに逝きたいです。』
『でも……』
願いを叶えるのか叶えないのか、どっちなんだよッ!(笑)