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2017年12月20日水曜日

空気清浄機

「やあ、まいったよ。空気清浄機が余計なこと言うんでさ。」

治療の仕事が終わって、2階の居間に入ってきた夫が笑いながら言っている。

うちの1階で開業している鍼灸院には、この春けっこう高価な空気清浄機を買って、置いてある。

プラズマなんとかというもので、それがよく喋ってくれるんで盲人の夫には都合がいいんだ。
朝、スイッチをいれると、「おはようございます」と言うし、夜電気を消すと「おやすみなさい」なんていう。

それで、夫がそれにおならを嗅がせてあげたら、
「汚れをみつけました。きれいにします。がんばります。」
なんて言ったんで大笑い。

さっき患者さんが治療を終えて、会計をするために空気清浄機のそばのソファーに座ってバッグを開いていたところ、となりにいた空気清浄機ちゃん、

「汚れを見つけました。」
と、高らかに宣言して、
「がんばります」
と、エンジンをふかし始めたんだそうだ。

その患者さん、ほんのりよい香水の香りがしていたそうで、

「わたくしのことでしょうか?申し訳ございません。」

なんて言われちゃったんだそうだ。

花粉も不純物質も、おなら物質もほこりも、何でもキャッチできる優秀な清浄機。

でも、香水のかおりは区別ができなかったんだ。

2017年12月2日土曜日

みなみ野三療館レポート5「一寸」

東洋医学では長さを尺と寸で表している。

一尺はひじの曲がる内側の関節のところから手首の間節のところまでを一尺としている。
なので、その十分の一が一寸。

なので、ひとによって年齢によって尺の長さが変わるから一寸も変わってきてしまう。

だいたい人差し指と親指とで丸を作ったときのひと指し指の先から第二関節のところまでがその人の一寸なんだそうだ。

治療家は患者さんの尺部をさあっと撫でるとその人の一寸が体験的に分かってしまうとのこと。

つぼたちは、からだじゅう居場所がちゃんと決まっている。

関節から何寸のところ、といった感じで。
そして目標とされたつぼは治療家の指先へ微細なサインを送ってくるという。
それはちょっと指が引っかかるような、ちょっと油がくっついているような、へこんでいるような、出っぱっているような…。

肌ざわりの悪いなどと、色んなメッセージをミックスさせてサインを送っているんだ。

そのつぼたちの微細なメッセージを指先で読めていける人が腕のいいはり師となっていくんだ。

2017年11月18日土曜日

みなみ野三療館レポート4「はり先」

治療に使うはりには、長さ、太さ、材質、しなり具合と色々ある。
また、はりの上側にある、はり師が指で持つ部分は龍頭(りゅうず)と言われているけれど、そのはりのグリップにあたるところでさえ、太さ、長さ、滑らないように刻まれている溝でさえ色々。

はりの先も、これまた色々ある。
キリのようにシューッっと円錐状に鋭くとがっていくもの。
丸い鉛筆の先のようにはりの太さがずっと一緒で先っちょのところだけ円錐状になっているもの。
先がすりこぎのように丸くなっているもの。
他にも色々あるかもしれない。

パパはすりおろしと言われている、シューっと円錐状になっているものを特注で注文しているんだそうだ。
他にも色んな種類があるはず。

私が若い頃ははり先を研ぐ、なめし皮のようなものさえあった。
もちろんメーカーも色々。

むかし、はりの刺す腕を競う腕試しがあった。

水があふれあふれのバケツにリンゴが浮いている。
その水を1滴もこぼさないようにしてリンゴにはりを刺していくんだ。

文化祭などで行なわれていたらしい。
頭の上のリンゴを矢で打ち抜くくらいに難しい。

2017年11月4日土曜日

みなみ野三療館レポート3「脈」

東洋医学での診断は、顔色を見たり問診したりもするようだけれど、大切なのは脈だ。

手首の内側、親指の下側にある橈骨動脈(とうこつどうみゃく)のこと。

脈なんかで分かるのかな?と思うけれど、私たちにだって変化を捉えることができる。

走った後には脈はドクドク早くなるし、熱があるときにはパカパカ軽く浮いたように早く打つ。
お酒を飲んだ後には脈が太く膨らんで、太鼓を打つようにドカンドカンと強く打つ脈に なっていくし。

ぼんやり静かにしているときには細く小さな脈。
そこへ突然びっくりすることでもあれば、精神の動揺でバクバクと心臓と一緒に脈も激しく波立つ。

パパたち経絡(けいらく)治療家は、脈から疲れ具合や精神の状態、体のありようなど 判断していく。

そして経絡治療とは、体内のさまざまな部分のバランスを整えていく手法だから、
昔、痩せるつぼが流行ったことがあったけれど、同じつぼを使っても、「食べ過ぎているひと」にとっては食欲を抑えることになるし、「食欲がない人」人は食欲が出てしまう ことになる。

いっくらもっと痩せたいって思っても、生理的に痩せていればその人にとって最もバランスのよい状態にしていくから食欲が増してしまうってことになってしまう。

哺乳類としてのよい状態は、人間社会の見た目とは違うからなかなか難しい。

2017年10月21日土曜日

みなみ野三療館レポート2

鍼灸治療と言っても色んな種類がある。

学んできた学校や、そのとき教えてくださった先生によって鍼灸師はそれぞれ自分の好みの手法を選んで勉強を続けていく。

パパのように髪の毛のような細いはりだけで治療している人や、
磁石を利用したり、ステンレスの針を使って電流を流したり、
長めの針を何本か体に刺したままで治療する方法や、
耳を中心にしていく人や他にもたくさんの種類があるようだ。

それぞれのやり方によいところがあるんだから病気が治ってくれさえすればなんでもよい。

パパが師事している経絡(けいらく)治療は

「そんなので効くの?」

と言われるようなもので、はりが刺さった感じのしない優しいやり方なんだ。


テキストで、補捨(ほしゃ)論(はりの刺し方の手法のひとつ。術者の気を患者へ補い、邪気を外へ捨てること)のはりの刺し方のところを読むと

「蚊虻の止まるがごとく、留まるがごとく、帰るがごとく」

はりを刺すんだそうだ。

蚊が止まったか、飛んで行っちゃったんか分からないように
針の先っちょを皮膚のつぼに当てて、「気」を送らなきゃならない。

上手に「気」が送れると何にも感じないときもあるけれど、
その時病んでいたところに木漏れ日のような温かさのようなバイオリンの音が
ツーっと流れ込んでくるような不思議な間隔が起きる。

それで体中のあちこちのバランスが調整されていくんだ。

今から4千年前に書かれた中国の本の中に書かれていることだ。

2017年10月7日土曜日

みなみ野三療館 レポート1「逆子」

みなみ野三療館は私の家の 1階にある。

パパ「夫」が一人で行っている。

今年の春、新築で引っ越ししてきたんで綺麗だし、ちょっとオシャレ。

以前 「逆子」のところで、パパの腕前は百発百中と書いたが、本当は二十発二十中なんだ。

帝王切開の予約をしてきた人から、先日の娘の異常のあった5カ月の子まで、時期はいろいろだし妊婦の年齢や子供の数もちがう。
手首の内側にある脈をみて、足の内くるぶしのあたりと前腕の真ん中あたり、背中と肩にごくごく浅く鍼をして、あとは5回ひざの下あたりに小さなお灸をするだけだそうだ。

娘の場合、1回目は変化がみられなかったが、
2回目は胎動があったから、この時に神秘なメッセージを感じた。
胎児は正しく頭を大地にむけたんだろう。

3回目は処置の直前だ。未熟なまま脱出するんだから、スタート準備をしていたんだ。
娘はおならがたくさんでてしようがなかったと言っていた。

パパに以前の症例をきくと、逆子体操しても治らなく、諦めてきていた人たちが多かったという。
娘の場合、羊膜にくるまれたまま胎児は出てきてくれた。
母子ともに一番よい状態でみちびかれるらしい。

非科学的な方法だと言われることもある鍼灸だけれど、確かに治せてきている。
しかもへその緒が絡んだりとか途中で引っかかったりというトラブルは1度もなかったとのことだ。

どなたか東洋医学に理解のある
産科のドクターと研究できたらかっこいいのに。

2017年9月29日金曜日

逆子

次女が妊娠5カ月で胎児に重篤な異常が見つかって、やむなく早産させることになった。
処置の前日、逆子だから鍼をしてと連絡があった。

パパ、「夫」は鍼灸師だ。
逆子を治すことにかけては、百発百中で治してきている。

5カ月ほどの胎児だと足や手が先に出ちゃうと体がひっかかって、また体がうまく出たとしても頭がひっかかって、切れてしまうんだそうだ。
その後残った肉塊を掻き出すらしい。

三日前、19歳の人がそんな風になってしまったとのことだった。

主治医も努力してくださったそうだが逆子は治らなかった。
けれど、パパの治療を許可してくださった。

前日の昼、第1回治療
午後、エコーにて変化なし。

夕食後、第2回治療。
胎動あり

処置日朝、第3回治療。
胎動あり

9時、エコーにて逆子が治っていることを確認する。
先生も看護婦さん達もびっくりされていたらしい。

人工的に陣痛が起こされ出産となった。

胎児は羊膜に包まれたまま無傷でつるりと出てきたという。
次女も元気でよかった。

棺の中には大きな水風船のような女の子。

皮膚はごくごく薄くて、棺を乗せていたストレッチャーがちょっと動いただけでもふるふるとピンク色の体内液が揺れていたという。
目鼻口はへこんで埋もれかけていたけれど、手足はちゃんとついていた。

パパの鍼のおかげで体を裂かれることはなかった。
薄い皮膚だったというが、破れなかったのは奇跡だ。
看護婦さんが丁寧に扱ってくださったことも大きい。

刺しゅうのある布団がかけてあって、きれいな花がそえてあったという。
優しい心づかいで目が熱くなる。
天国でばあちゃんがかわいがってくれるだろう。

パパはこの日のために、40年あまりも難しいといわれている経絡治療勉強続けてきたのかも。