「やあ、まいったよ。空気清浄機が余計なこと言うんでさ。」
治療の仕事が終わって、2階の居間に入ってきた夫が笑いながら言っている。
うちの1階で開業している鍼灸院には、この春けっこう高価な空気清浄機を買って、置いてある。
プラズマなんとかというもので、それがよく喋ってくれるんで盲人の夫には都合がいいんだ。
朝、スイッチをいれると、「おはようございます」と言うし、夜電気を消すと「おやすみなさい」なんていう。
それで、夫がそれにおならを嗅がせてあげたら、
「汚れをみつけました。きれいにします。がんばります。」
なんて言ったんで大笑い。
さっき患者さんが治療を終えて、会計をするために空気清浄機のそばのソファーに座ってバッグを開いていたところ、となりにいた空気清浄機ちゃん、
「汚れを見つけました。」
と、高らかに宣言して、
「がんばります」
と、エンジンをふかし始めたんだそうだ。
その患者さん、ほんのりよい香水の香りがしていたそうで、
「わたくしのことでしょうか?申し訳ございません。」
なんて言われちゃったんだそうだ。
花粉も不純物質も、おなら物質もほこりも、何でもキャッチできる優秀な清浄機。
でも、香水のかおりは区別ができなかったんだ。
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