私が中学生のときのこと。
学校で、近くの中学校だったかどっかのグループだったか、同年代の目の見える学生たちとのクリスマス交流パーティーが開かれた。
ホールに集まって、歌やゲームが行なわれて、サンタクロースまでほんとにやってきてくれた。
私たち、特に全盲の子たちは、サンタクロースのあっちこっちをキャッキャ言いながら触りまくって、自分のイメージとのすり合わせをしていた。
三角に垂れ下がった帽子の先にはボンボンがついていたし、顔には大きくて長いひげもちゃんとついていた。
大きな長靴のふちにはもこもこの綿がぐるりとくっついていたし。
そして最後、プレゼント交換の時がきた。
「お隣の子と二人ペアになって交換しましょう。」
わあわあ盛り上がって二人ペアが出来ていく。
あっちこっちのペアからプレゼントをほどくたびに歓声が上がっている。
ジリジリ、パチン!
私とのペアになってしまった上品なその子は、私のプレゼントをさっそく開いて、
「かわいい箱をありがとう。」
と言って、輪ゴムの音を立てた。
恥ずかしい。
輪ゴムの音が私の鼓膜を打つ。
プレゼント、ちゃんと買ってきておくんだった。
プレゼントに輪ゴム留めはない。
私が渡された、その子からのプレゼントにはリボンが四角にかかっていて、静かにほどいて紙を開くと、手作りの箱が現れた。
「これ、トナカイと雪だるまなんですよ。」
その子は、私たちが眼が見えないからと、わざわざ紙を切り抜いて、触って分かるように、箱のふたの上に貼ってきてくれたという。
箱の中にはハンカチとティッシュ、それもなにかキャラクターのものだった。
それと、リリアンで編んだ手作りのキーホルダーまで入っていたんだ。
先生から事前に、プレゼント交換があるから300円だったか500円だったか以内の もので、わざわざ買わなくても自分の持っているものでもよい、と聞いていたから。
私は寮でプレゼントを買いに街まで行くのは出来ないし、一人で行くのは面倒で。
自分の持っていた小さな小箱、それをプレゼントとしてしまったんだ。
寮母先生に聞いたら、きれいに拭いてくれたんでプレゼントでも大丈夫と確認はしてはいたんだけれど。
中には何も入れておかなかった。
空っぽだったのが恥ずかしい。
押入れの中にきれいに畳まれていた紙袋、なんの印字があったのか分からないけれど、それに入れて、リボンないから輪ゴムで留めておいたんだ。
輪ゴムの音が鼓膜を打つ。
「じゃ、何をもらったか聞いてみましょう」
司会者がクラスメイトに聞いている。
「わたしはハンドクリームを贈りました。つるつるのきれいな手になって、私たちにその手を差し伸べてもらいたいからです。」
どっと拍手と歓声があがった。
あとになって聞いてみたら、その子は通学している子だったんで、お母さんと買い物に 行ってきたって言っていた。
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