2018年7月12日木曜日

麦の穂

麦の穂

北海道マラソンレースに参加するために
仲間たちが運転するレンタカーに乗せてもらっていた。

「うわあ!すごーい!どこまで続いているの?この麦畑!」

「ここはジャガイモの葉っぱ、どこまでも続いているよ!」
 
みんな窓の外を食い入るようにみている。 
声が窓ガラスにぶつかっているから、車内の伸びのない声。 

そうなんだ。
『この辺はどこまでも続いている畑なんだなあ…』

私はみんなの感動の言葉をぼんやりと聞いていた。 

全盲の私には、どこまでも続く畑って、
宇宙とか、海とかっと一緒で、想像も出来ない

『ふーん。雄大なんだろうなあ。』
みんなの言葉はただ流れていくだけ。 

冷房のかかった車の中だから、なんの感じもない。


車が急に止まった。 

「ちょっと外に出て見ようか?」

みんな写真でも撮りたいんだろう。
私は別に降りなくても良かったのだけれど、
「一緒に!」っと言われたので、降りてみた。

「ほらこれ麦」

アスファルトの道際まで麦のツンとした
穂が幾つもいくつもある。 

ごっそりとごっそりと集団がある。 

みんなは、そこら辺に散らばって、広々とした風景に酔っている。 
んやりとした風が降りてきた。

「麦がずううーっと向こうまで、空のとこまで、麦があるよ!」
 
車内でみんなが感動の声をあげている中
私はうっかり黙っていたから、
「まずいっ」と思わせてしまったらしい。 

盲人は私だけだったから…
 
ヒザの高さ程に実っている麦。 

初めて触った…

麦の穂、ちょっと強く触って
麦の粒たちはビクともせずに
固く固まり合って、ツンと空に、チクンと尖った先を向けている。
 
私は雄大な麦畑の端っこを触らせてもらって来たんだ。

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