車内はキツキツだ。
私はドアの横のバーに掴まっていた。
すぐ横の席は優先席。
”トントン”と肩を後ろから叩かれて
「どうぞ空きましたから座ってください」
と言われ、席を譲って貰った。
今日はなんだか混んでいて
身動きするのも大変だった。
けれどせっかく声をかけて下さったので
お礼を言いながら、人をかき分けて
やっと座ることができた。
譲ってくださった女性が私の目の前で
おしゃべりを大きな声で始めた。
「…まったくねえ体の不自由な人がいるのにねえ。」
明らかに私より年上そうな年配の方の声。
どうやら同じ年頃のお友達と一緒の様だ。
「…ねぇ座らせてもらったら?」
そのお友達が、
私に席を譲って下さった
女性に話かけている。
盲人の私の足は丈夫だから
本当は立っていられるのに…。
その会話は優先席付近の全員が
聞こえていたに違い無い。
しかし優先席では人の動きはなかった…
お年寄りから席を譲って貰った私は
なんだか申し訳なくて、
小さく体を縮めて座っていた。
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