2017年8月30日水曜日

幅跳び

もう学校の小学5年生の時。
新任の体育の先生が来た。

先生は体操が得意で、バク宙なんか目の前でして見せてくれた。
私には先生の背中を触らせたままバク宙をして触らせてくれた。

5年生は8人。盲学校でも全盲は私一人だけ。

幅跳びの授業はひどくつまらない。
砂場の向こう側で、淵の木枠に足の先をひっかけて両腕を大きく振って飛ぶ。
練習を独りぼっちでしていなければならない。

弱視の友達はみな、向こうの方から走ってきて飛ぶ。

だから私の何倍も飛べるし、わあわあ楽しそうだ。

新任の先生はすごいことを言ってくれた。

競技者たちは走る時、歩幅も決まっていて走る数も決まっている。
だから全盲だって方向さえ分かれば、助走をつけて飛べるはずだ、と。

私は弱視の友達と一緒に平らなグランドで助走の練習をした。

先生は足跡に木の棒で強く目印を引いて、歩幅を計り、一人一人歩数を決めた。

私は右足から5歩で飛ぶ、ということになった。

砂場の向こうで友達が呼んでくれている。

1、2、3、4、5、それっと、両腕を振り上げて飛んだ。

私はちゃんと砂場の中に着地できた。

一人で走って思い切り飛ぶ。

なんて解放的で気持ちが良い。

先生!私、目が見えた人になったみたい!

あの時、ほんとうに嬉しかった。

1 件のコメント:

  1. 本当に素敵な先生だね!
    でもさ、この解放感を得るまでに、何回も何回も先生はお母さんの歩幅をはかってくれたんだと思うと、先生を尊敬するわ!
    めんどくさいのに、何回も!
    でもこれって子育てだよね!こうやって根気よく教えていくことで、素晴らしい感動を与えられるんだよね。
    めんどくさがっていてはいけないよね。
    お母さんが素敵な経験をさせてもらったように、このブログを読んで私もとても大切なことを学んだよ!
    先生ありがとうございます!

    返信削除