山の中からまっすぐな細めの木を見つけてきて、ペンキで白く塗っ
上の所には穴を開けて鈴を一つつけてくれた。
私はそれを使って寄宿舎と学校との間150メートルくらいを通っ
私は寮生活だから1カ月に1度、家に帰ることができた。
その土曜日になるとおかあちゃんが迎えにきてくれて、日曜日には父ちゃんが送ってくれる。
寮に帰る時にはお菓子を持ったり新しく買ってもらったシャツなん
父ちゃんは自分で作った杖を釣り竿をいれる袋の中にしまって持っていく。
電車で帰るから町に出なくてはならない。
私は自転車の後ろの荷台に乗っていく。
とうちゃんの背中に掴まって、小脇に抱えられている杖が隠された袋をぎゅっと握る。
向こうの端っこはハンドルに乗せてあるんだ。
父ちゃんはこの釣り竿の袋の中に私のことと白い杖のこととを閉じ込めている。
私はちゃんと分かってた。
時たま、知り合いに声をかけられることもある。
私は黙っていた。
寮につくと、袋から杖を出して玄関のの杖立てに私の手を取っ
じゃ、帰るで。
と言って父ちゃんの草履の音が遠ざかっていく。
とうちゃあん!!
と呼んで、草履を追っかけて、花壇につまずいて転ぶ。
父ちゃんは私を下駄箱の所までつれて帰る。
父ちゃんはぞうりの音をさせずに帰っていく。
とうちゃあん! とうちゃあん!
玄関の鉄のとびらのところで呼び続ける。
寮母先生がきて、部屋に戻される。
忍び足で帰っていく父ちゃん。
もう亡くなって5年になる。
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