気持ちのいい日。
庭で青紫色の液体の入ったビニール容器を片手にシャボン玉
しゃぼん玉に私のうちが映っている。
家のとなりの木も一緒に映っている。
しゃぼん玉の表面がゆらゆら揺れる。
古くて汚い私の家が、かわいい小人の家みたいになって映っている。
緑色の三角の屋根に四角の窓がひとつ。
その家をすかして、向こうの山が見える。
50年ほど前の記憶だ。
しゃぼん玉の映し出した景色と一緒に揺れていた表面。
私は次から次へとしゃぼん玉を吹き出していった。
どれにもみんな私の家がかわいくなって、ゆらゆら揺れていた。
しゃぼん玉のてっぺんから三角の水の幕が飛び出るとぱちっと消えてしまうんだ。
確かに長い間、映像として記憶していたはずだけれど、
そのときの感情だけ残されて、その風景は思い出せないような気もする。
もしかしたら、いつのまにか言葉の映像として書き換えられてしまっていたのかもしれない。
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