2017年10月24日火曜日

ほうき

私が小学1年生の時から生活していた盲学校の寮は6人部屋だった。

たたみ12畳に、作り付けの押入れとロッカーと机が6個づつ畳をぐるり囲んでいた。
窓は南向きで、ベランダに布団も干すこともできた。

大きな窓開けると、すぐ前の林の空気が流れ込んできて気持ちがいい。

小中高、各学部ごとに縦割りされているんで、きょうだいのような感じだ。

6時半、起床で点呼が終わると掃除が始まる。

私は、それっそれっとばかりにほうきを大きくスイングさせて、音高く畳をこすっていく。
みんなは、椅子を出したり引っこめたり、机の下の荷物を上に上げたりしてほうきの道を作っていく。

「あら!それじゃゴミが集まらないでしょ。」

廊下から寮母先生が部屋に入ってきて、私の手の上から先生の冷たい手を添えてくる。

ほうきを跳ね上げると、ほこりも一緒に舞い上がってしまうってこと。
ほうきの面をたたみに直角に当てて、ほこりを押さえつけるように静かに穂先を滑らしていく。

ほうきを送り出したら、ほこりを押さえつけるようにする。

先生がお手本を聞かせてくれる。
小さく優しいほうきの音だ。
さらさらとせせらぎのようだ。

ほこりは風が吹く時にだけ舞うんじゃなく、
乱暴に扱ったほうきの先でも舞い上がるんだそうだ。
それが朝日の中にきらきら見えるらしい。

盲学校の先生は私たちが出来ているようだけれど、本質がわかってないって所をちゃんと見つけてくれる。
気が付いてくれる。

こういう大切なこと、教えてもらえてよかった。

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