私の父はギャンブルとお酒好きで、51歳と言う若さで脳卒中になり、右半身不随で30年もの長きを過ごすことになってしまった。
病気になったのは私が結婚する前。
子供ができてから実家に帰ると、子供を近くに寝かせておくと片手でずっとうちわの風を送り続けてくれたりしていた。
ある日 パパ「夫」は粋な計らいをしてくれた。
紙袋に数冊の写真集を入れて
「お父ちゃん、これ将棋の本ですから勉強してください。」
父は、もう何度かパパから渡されているので将棋の本をことのほか楽しみにしているようだ。
「おめえんちの父ちゃん、女の裸の写真べえの本を持って来てるんだで!」
黙っていてあげればいいのに、母は余計なことを言う。
すかさず喧嘩っぱやい父は怒鳴りっ飛ばす。
「ばかもん!すらっぺ言うな。将棋の本だって言ってるがな。」
父は片手で急須だって湯飲みだって投げつける。
「旦那に酒もってこい!」
父は優しい声でパパに、いつも悪いんな、と、お礼をいうのだ。
パパは母に、あれは男の将棋の本なんですよ、と笑いながら説明する。
パパの湯呑みが空にになると、父はどくどくと日本酒をいれる。
私は隣の部屋でおっぱいをあげている。
優しい人でよかった。
また今日も飲みすぎちゃうんだろう。
父のベッドの枕の向こう側には、紙袋にはいった将棋の本がもう枕より高く積み上げられてきているという。
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