社内でお手洗いまで行きつくまでには3枚の扉を通らなければ個室にたどり着けない。
床は平らだし、間取りも分かっているから白杖は持たずに代わりにタオルを丸めて持っていく。
3センチほどもある立派な分厚い扉。
私は壁を指先で触れながらお手洗いに向かう。
壁が切れて扉を通過しようとしたとき、危うく左の指全部を扉の蝶つがいの間に挟みこまれて指を潰すところだった。
かろうじて右手で閉じられてきた扉を抑えることができたから、潰したのは心臓だけですんだ。
ほんとにひやっとした。
ほんとにあとちょっとで危なかった。
左手をグーパーしてみる。
床は絨毯が敷きつめてあるし、靴は脱いであるから足音が分かりにくい。
社員たちはもちろん挨拶してくれる人もいるけれど、
音もさせずに無言でほんのり柔軟剤の香りだけを残して通り過ぎていく人達も多い。
扉は開けたって閉めたって、こちらも静かだから分からない。
壁に沿って歩いて行くと、蝶つがいのあるところと、次のノブのある側とがある。
どっちにしたってうっかり指を出してしまったら、運が悪ければその扉が指のギロチン台になってしまうかもしれないんだ。
みんな忙しから、扉のそばに人がいたっていなくったって、ぱっと扉を跳ね開けたらそのままだから反動で 勢いよく戻ってきてしまう。
そこで、細長くに丸めたタオルを差し入れ、もう一方の手で扉に手を当てるように出すようにして構えながら 通っていく。
ほんとうにたまーに「どうぞ 開いていますよ。」と言ってくれる人もいてくれる。
たまには扉が固定されて開きっぱなしの時もある。
蝶つがい側が開いているから注意!っと思いきや、固定されていたりする。
孫たちは男の子だ。
扉を抑えておいてくれるような、そんな男性になってほしい。
扉は抑えててねっとことあるごとに今からお願いしている。
小さな紳士が扉を抑えてくれている時は私はタオルを持つことなく安心して通りぬけていける。
親を見て育ったら、紳士に育つはず
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