仕事を終えて、もたもた東京駅構内を歩いて帰宅途中のこと。
「おこまりですか?ご一緒致しましょうか?」
落ち着いていて、静かで美しい声。
若い女性だ。
私は
「お願いします。助かります。」
と言って、女性の細い右の腕に捕まらせてもらって誘導してもらった。
「あの、わたくし、そこのヨックモックで販売員をしていたものです。
よくお客さま、お買い上げ下さっていましたので、お見かけしましたので声をお掛けしたくなってしまいました。
実はもう辞めまして、留学していましてこちらに戻ってきたところなんです。」
この雑踏なか、私に声を掛けてくれる人も、そうでない人も、私からすればみな透明人間だ。
見たことあってもなくても、みな透明人間だ。
盲人に声を掛けて下さるときに自分が誰かは言う必要はないのかもしれないけれど。
見た目という情報が無いので、こんな風にちょっと言ってもらえるだけで心もちがずいぶん違う。
それに何か嬉しい。
女性はホームまで送ってくださり
「お気をつけてお帰りくださいね。」
と言って離れていった。
しかも登山用リュックしょって、ジーパン履いている私に、抜群の敬語で話して下さった。
素敵な女性だった。
その女性とお話をしていて、すっかり酔ってしまった。
その上品さと気品にすっかり酔ってしまって、しばらく良い気分でいられたんだ。
思い出すだけでも良い気持ちになってくる。
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