「あ、どうしよう。杖が折れてしまってます。」
会社の扉の前で私は 人にぶつかって白杖が飛ばされてしまった。
とても上品な男性が謝りながら私の手に白杖を拾って戻してくださった。
私はお礼を言いながら白杖を持ってみると、グラグラブラブラしている。
私のは折りたたみ式の携帯用の白杖なんで、その繋ぎ目のところが折れてしまっていた。
相当使い込んでいたからはげちょろけているし、ずいぶん繋ぎ目も劣化していたんだろう。
でもこまった。
その男性は、弁償するからと言って、いくらぐらいのものですか?と、尋ねてくれた。
私は、
「お金をもらっても、その辺に売っているものでもないからすぐには買いにいけないし、それよりも家に帰れないです。」
予備の白杖を用意しておくんだった。
男性は、どこに売っているのかと聞いてくださる。
高田の馬場にある、と説明していると、どうも手元に集中しているようだ。
スマホで調べている気配がする。
その男性は名刺を出して、アマゾンのものですと名前を教えてくださった。
おもわずアマゾンにも白杖まで置いてらっしゃるんですか?
と、尋ねてしまった。
私は警備員の方に託されてとりあえず出社した。
お昼前、総務に呼ばれて下へいくと、朝のアマゾンの男性が新しい白杖と折れてしまった白杖の修理されたものと、お菓子まで買ってきてくださっていた。
配達の早いアマゾンの方だけあって、2時間ほどで新品の白杖を 届けてくださった。
人にぶつかって白杖が飛ばされてしまったり、満員電車の中で折れてしまったり、自転車に噛まれて折れたりと、もう何十本折って きたことだろう。
でも、こんなことは初めてだった。
もう一度、お会いしたいくらい素敵な方だった。
もう一度、折ってくれてもいいんだけれど。
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