父が51歳で脳卒中で半身付随となってしまった。
今から30年も前になるけれど、その時に特別養護老人施設に入所を希望したら200人待ちで20年くらい待たなければならなかった。
長生きした父は、70歳過ぎてやっと20年以上待って特養に入所することができた。
私は子供たちと一緒に時々会いにいった。
「あ!耳かきさせて、おじいちゃん!」
長女は変わった趣味がある。
長女は愛用の竹の耳かきを出すとベッドに腰かけて父の耳を引っぱって無心に耳かきを 始めた。
耳垢を見ると手がうずいてくるらしい。
耳穴に耳垢が盛り上がってフタをしている。
これじゃ耳が遠いのに輪をかけて聞こえなくなってしまう。
ざくざく耳あかがティッシュの上に溜まっていく。
ザクザク
じいちゃんの耳のあなは大きいから掘り甲斐がある。
長女は無言で無心に耳かきを動かしていく。
じいちゃんは目を閉じて気持ち良さそうだ。
都会には耳かき嬢という仕事があるそうだけれど、高齢で手が動かない人にとって耳かきは難しい。
「耳かいてもらってよ、おめえあんな気持ちのいいことはなかったで。」
母が面会に行くたびに父は何度も繰り返していたらしい。
お風呂や着替えはして頂けるけれど、耳かきなんてかゆいところにはなかなか手が回らないんだろう。
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