保証人になってくれる人は母しかいなかった。
夫のほうの両親は反対を押しきって結婚しているから、話をすることすら出来ないし。
私の父は病気でダメだし、母は元気だけれど字が読めないし書けない。
私たちは土地を買うことにしたんだ。
田舎だけれど駅にちかい、いい物件があったから。
車にも自転車にも乗れない私たちはどうしても駅の近くに住まなくては不便だ。
誰にも相談することもできなかったので、司法書士の方にお願いすることにした。
色々ある書類を読んでもらって、不利益なことはないか見てもらった。
母は示されたところにゆっくり名前を書いた。
「ていねいな、きれいな字ですよ」
司法書士の方は、こんな言葉をかけてもくださった。
母は、この日のために名前を書く練習をしていたそうだ。
褒められて嬉しそうだった。
額の大きな買い物でも、盲人と文盲でもこうして土地を買うことができた。
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