決断

耳の下、喉の奥が気持ち悪い。
胃がむかむかする。
食べ物を口にすると、すぐに胃から逆流してきて、戻してしまう。

これがつわりというものらしい。
卒業式まであと４ヵ月。
体育の授業もあるし、病院での実習もある。

それよりもだ。
このことで結婚はしてもらえそうだけれど。

結婚はしてもらえると思った。
次からどっと不安が溢れてくる。

まず赤ちゃん。
彼は網膜色素変性症という遺伝の強い目の病気を持っている。

彼は弱視だけれど、視野が狭くてあてにはならない視力だ。
間もなく全盲になる。

全盲の私たちで、目の悪い子を育てることができるだろうか。

笑いながら子供の手を引きながら、家族でお出かけなんてしていけるんだろうか？

子供は私たちのことでいじめられ続けるんじゃないか？
やっぱり彼には目の見えるお嫁さんの方が綺麗だし便利だし車だって出してもらえるし、人生を通してきっといいことが多いことだろう。

わたしは？
目の見える人と結婚なんか出来るはずもなし。
諦めるなら、冬休み中だ。

でも私はお嫁さんになってみたい。
子供たちとケーキ焼いたり、本を一緒に読んだり、
おむつ干したり、彼につまみを作ったり、お弁当作ったり。
ただ、そういうことがしてみたい。

私のわがままか。
私自身では決断は出来なかった。