「次はお姉ちゃんの番ね」
ヘルパーさんが抑えてくれている自転車の荷台の子ども椅子に、私はお姉ちゃんを抱きあげて座らせた。
あしを前後に振って嬉しそうだ。
「足はパーにしてないと、タイヤに食べられちゃうからね」
「ばいばい!」
「いってきまーす!」
お姉ちゃんとヘルパーさんの声のしっぽが伸びていく。
「次はわたし!」
三女はもう待ちきれない様子。
寒いから、お姉ちゃんと追いかけっこが始まる。
「きたきた!」
二人がバタバタ戻ってくる。
ヘルパーさんに先日、子どもたちの話をしたら、友達として夕方来ますよ、と言って下ださった。
これはわたしから子どもたちへのクリスマスプレゼントなんだ。
「もうすぐクリスマスだけれど、サンタさんに何をお願いするの?」
7、6、3歳の子供たちに聞いてみた。
「あのね、自転車に乗りたあい!」
「うん、自転車に乗りたあいよお!」
「自転車って?子供用の自転車?」
よくよく話を聞いてみたら、大人の自転車の後ろの荷台にある子どもいすに乗りたいという。乗ってみたいと言う。
お友達みたいにお母さんが乗る自転車の後ろに乗って、ばいばいってしてみたいっと言う。
「サンタさんじゃなくて、お母さんが叶えてあげるね」
努めて明るく答えた。
ヘルパーさんは、ぐるり団地の周りを走って戻ってきてくれる。
わたしは子どもいすからお姉ちゃんを抱き下ろして三女を座らせる。
ジャンパーの裾を引っぱって、もう1度深く座らせ直してみる。
「ばいばい!ばあい!」
カチャリとヘルパーさんがペダルを踏み込む音がする。
三女の細い声が消えてゆく。
こちらではお姉ちゃん二人がバイバイの大合唱だ。
自転車が見えなくなると追いかけっこだ。
子どもたちのはしゃぐ声を向こうに聞きながら、私は花壇のレンガにちょっと寄りかかって手をこすりあわせる。
こんな寒い夕方、来て下さったヘルパーさんにありがとうを何回言っても言い足りない。
ヘルパーさん、ありがとう。
お母さんの乗る自転車じゃないけれど許してね。と、口の中で言っていた。
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