2017年12月25日月曜日

ラブホ

今日はクリスマスなんで、ちょっとドキッとばなしを。

結婚前に、たった1度だけラブホに行ったことがあるんですよ。
その時の彼は、いまの夫なので安心して書きますけど。

かれは当時、弱視だったけれど夜盲だったから、夜は全く見えず。

だからといって、昼間からうろうろ行ける勇気もなく。
でも私、1度ラブホってところに行ってみたかったんで連れて行ってとお願いしたんですよ。

寒い夜で、山手線の駅のどっかの近くで。
この辺りはラブホ街だからと言ってちょっと狭いような路地をうろうろ歩きはじめたんです。
まず、満室、空室のサインが見えない。
入口が分からない。

たまに靴音はするけれど、聞くわけにもいかないし。

歩き始めたものの、私はすっかり恥ずかしくなってしまって、やっぱり帰ろうよ帰ろうって彼の腕を何度も引っ張っていたんですよ。

「せっかくここまで来たんだからさ、何とか見つけようよ。恥ずかしいって、みんな恥ずかしいんだからさ。」

すんなりラブホに入っていける人たちの恥ずかしさと、

「ラブホ空室の入口はどこですか?」

なんて訊ねる恥ずかしさは、恥ずかしいを10万回言ったってまだ言い足りないほどだもの。

人気のない路地。
白杖で路地の端っこを確認していく。

もう恥ずかしくって恥ずかしくって
なんだかみじめで

世間に負けたって感じで
全盲に嫌気が差してしまって

どうにも歩きたくなくなってしまって。
それでも寒いから、コートとコートの襟がちょっぴり背中をあっためながら後押ししていてくれたのかもしれないんですけれど。

「あ、入口だ!」

熱心に入り口を確認していた彼は、マットが敷かれていたから、うまいこと扉を見つけることができたんですよ。

いよいよ恥ずかしいのが頂点になってきたんですよ。

扉を開けると狭い空間。
何かおばさんが声を出してくれたんです。

「空室ありますよ。」

はっきりと聞こえたんです。

そしたらまた絶体絶命。
料金を支払うのはいいのだけれど、カギを渡されて、その番号のお部屋を見つけなきゃいけないとのこと。

わたしは彼の背中の後ろに隠れてじっとしていたんです。

「部屋なんて見つけられないじゃない!恥ずかしいよ、帰ろうよ!」

かれはヒジで私の左手をぐっと抱きこむんです。

受付の中から年配の先ほどのおばさんが出てきて、かれを誘導し始めたんですよ。

何だかとっても優しい声の方で、部屋に入ると彼に電話のある場所を教えると電話してから迎えに来ますからねっと言ってくれているんですよ。

で、お風呂のお湯の説明やら細々としたグッズの説明まで彼にしていってくれるんです。

私はそのあいだ、すみっこで下向いて、恥ずかしさの石になっていたんですよ。

おばさんが静かに出ていったんです。

障害者にとって、大人の練習場にたどり着くだけでも勇気と行動力と恥辱に堪える精神力と情熱がなくちゃ出来ないんですよね。

メリークリスマス!
よいクリスマスを!

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