私が学生の頃の盲学校では一クラス10人足らずの同級生しかいない。
埼玉県のあちこちから集まってきているのにたったこれだけにしかならない。
その中の生徒たちほとんどが弱視の人たちばかりだ。
私のようにまったくの全盲はクラスに日とりか二人しかいない。
高校生になってからクラスメイトになった弱視の男子で全盲の人ばかりに頭をたたいたり、背中をつついたり、叩いたり、紙くずをぶつけたりと、そんな幼稚なことして楽しんでいるのがいたんだ。
同じ盲人同士情けないことだ。
いっくら嫌がっていても、ハエや蚊のようにしょっちゅうやりにくる。
捕まえてぶってやろうかと思うけれど。
こっちが見えないと思って黙って音を立てないように逃げていってしまうんだ。
まったく頭にくる。
私は大声で文句を言って手を振り回して捕まえようとするけれど、たまにちょいとかするだけで逃げられてしまう。
周りの友達たちは笑っていてなんにもしてくれない。
そんなある日。ついにやった!
顔をつついて来たその手をうまく掴むことができた。
私は無我夢中でその素肌の腕を両手で掴むやいなや、がぶり噛みついたんだ。
噛みついてやった。。
今でも肉に歯が刺さっていく感触が残っているほどだ。
ギシギシ噛んだ。
ギューギュー噛んだ。
唇と舌が腕の皮膚に触れるのは嫌だから、くちびるにはぎゅっと力を入れて、引き締めておいて、舌はのどの方へと巻きこんでおいた。
「痛ててて!やめろ!離せ!」
ドスドス頭や背中にゲンコツが飛んでくる。
離すもんか、くやしい!
闘犬の噛み上手なピットブルなんかもこんな気持ちだ。
「ごめんごめん、俺が悪かったよ、もうしないから!」
と、やっと謝る声を聞いたんで離してやったんだ。
相当強く噛んだらしい。
血がにじんでいたらしい。
しばらく私の歯型が彼の腕にくっきり残っていたとのことだ。
それ以来、私たち全盲は幼稚な嫌がらせにイライラすることもなくなったんだ。
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