「さ、聞きボラ行ってこようか?」
私が若いころ。
本の読み聞かせ…と言うか語りって言うか、人を集めてはそんなことをしていたことがあった。
そこの控え室にはボランティアの人やらスタッフやら出演者やら、ちょっと大きな催しだったので大勢の人がいた。
つぎの出演者は小にまひの人で言葉もはっきりはなすことができないんだけれど一生懸命に民話を語るひとだった。
「聞きボラってなんですか?」
初めて聞くことばなんで尋ねてみたんだ。
「障害者がなにかするときに聞いたり見たりしに行くボラ(ボランティア)のこと。」
その年配の女性は私が聞いているって言うのにいいづらそうな様子もなく大きな声で教えてくれたんだ。
ききボラか。
私が語っていたときも、ききぼらのひとたちだったんだ。
そういえば私が介護施設に勤めていた時、いろんな慰問というのか、素人たちが歌やら演奏やら演劇やらをしに来るたびに私たち職員がホールに入所者たちを連れていく。
「それじゃ見に行ってあげようかね。この年になって桃太郎さんや金太郎さんなんて面白くないけれどね。やりたがっている人たちがいるんじゃ見てあげなきゃね。」
なんて言っている人がいた。
確かにそうだとおもった。
愛染かつらや君の名はとか、青い山脈とか、昔のことはよく知らないけれど、そんな話だったら聞きたいんでしょうけれど、施設の慰問にはなぜだか子供扱いの演目でくるからやっぱり聞きボラになってしまうんだろうとおもう。
聞きボラか
いやな言葉だ。
障害者だってお金を支払っても見てみたいっていわれるような努力をしていかなきゃいけなんだろうなって思うけれどそれは大変なことだ。
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