2018年1月6日土曜日

優先席

いつものように通勤の途中の池袋駅で乗り換えて山手線を待っていたときのこと。

「お手伝いいたしましょうか?」
と、これもまた毎回ではないけれど駅員さんが声をかけて下さった。

「お願いします。」
毎日利用しているから、一人でも電車に乗りこんで行くことはできるけれどせっかくなので駅員さんの腕に掴まらせてもらっている。

いつもなら乗降客が降りきったところで電車の扉の脇のところまで案内してもらうのだけれど「優先席にご案内いたしましょうか?」なんて言ってくださった。
もちろんお願いしますと元気にこたえた。

「優先席を必要とされている方がおりますので席をお譲りください。」

私と一緒に乗り込んだその駅員さんは大きな声で優先席に座っている人たちに向かって声をかけたんだ。
「席が空いているなら教えて頂きたいですけれど、座っている方をどかしてまでは結構です。」

と言いながら駅員さんの腕を後ろへと引っぱったんだ。
ドア近くに座っていた人が無言で立ち上がって網棚の上に乱暴に固そうな荷物をごとんと放りこんだ音がする。

私はどちらをむいて頭を下げてよいやらも分からずに、謝りながらお礼を大きな声にして座らせてもらったんだ。
満員電車の中はしんと静まっていた。

一言、「どうぞ。」と言って貰えたらどんなに良かったことか。
きっと周りの人だって気持ちが良かったに違いない。

無言ってことはその人は嫌々仏頂面で立ち上がったに違いないんだ。
放りこまれた荷物の大きな音がそれを物語っている。

何だか私はおちつかず、いつもの居眠りもできず下を向いたままでいると、頭のなかは大きな耳になっていったようで周りの音が小さな音までが聞こえてくるような音の透明度が増していくようなおかしな気持ちになっていったんだ。

電車の中はきつきつの満員。
車輪の音と振動だけが続いていくばかりだ。

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