2018年2月27日火曜日

東京マラソン

パーン!

スタートだ。

私は、伴走ロープを
左手でギュット握る。

その途端、魔術にかかる。

普段は、白状を持って、
ゆっくりしか歩けない。

小走りすらできない。
全盲の私だ。

怖くない。

冷たい風が、顔を打つ。
空気が耳を強くこすっていく。

両側の応援の声は、
道幅を教えてくれる。

ゴウゴウと大河の様な靴たちの音。

「緩い坂、左90度!」

私は、遠心力で大回りしない様に、
左に体を寄せる。
前腕同士がくっつく。

大きく振られる腕は、
安全のサイン。

伴走者の声は、
目の前の景色を作っていく。

目の前に道が見えてくる。
ぶつかる物のない道。

思い切り大地を蹴って走る。

いつのまにか手の中からロープは、
消えてしまっている。

私は、目が見えて一人で走っている。

スピードあげて走っている

この時だけが
私を障害から解放してくれる
唯一の時なんだ。


だから私は走り続けていきたい。

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