2018年3月31日土曜日

へべれけ

帰りが遅くなってしまって
もうほとんど明日みたいな時刻。


電車から降りて改札口に
向かう階段へと急いでいた。


「あー。朝の。あの。山田って
言うんだけんどもお。ひくっ。」

「あ。朝。私のこと見かけると
手をとって横断させてくださる緑の方ですね。」


「うーん。うん。ひくっ。」

どうやらしたたか酔っている様で
お酒臭いし、ろれつも回っていない。

の方は毎朝、
駅前の道路を渡る小学生達のために
もう何十年もボランティアとして
緑のおじさんをしてくださっている方。

ちょうど同じ時間に通る私のことも
わざわざ手を取りに来て下さって
歩道の上まで乗せて下さっている。

「今日はお出かけでしたか?」

フラフラしている
緑のおじさんの肩が
ぶつかってくる。


「うーん。川越で飲み会が
あったんでえぇ。ひくっ。」

緑のおじさんがいつもの様に
私の手をとってふらつきながら
エスカレーターへと
誘導してくれようとした時

「何しているんですか?
お客様に触れないで下さい。」
と駅員さんが駆けつけてきてしまった。

私は知り合いなので。
と言ったのだけれど
聞き入れてもらえず

緑のおじさんは駅員さんに阻まれて
私の方へは来られなくなってしまった。


緑のおじさん
「あの人は目が見えねんだから
俺が付いてってやるんだよお。ひくっ。」

大声を出して、ろれつがまわらぬまま
怒鳴り始めている。

駅員さんは
私に早くお帰りください
と言っている。

緑のおじさん
ばかやろう!とかまで
言い始めてしまっている。

こりゃ大変。
駅員さんぶったりしたら大騒ぎだ。


ここは私が早く居なくなるのが
一番の解決策。


大きな声で
ありがとうございました
と言って家へと急いだ。


親切な方でも
へべれけに酔っていると
すっかり信用してはもらえない。


見かけたからと
飛んできて下さった緑のおじさん。

ほんとにありがとうございました。


また見かけたら助けてくださいね。

0 件のコメント:

コメントを投稿