2018年4月11日水曜日

花びら

流し台の上に出されていた
お弁当箱を取り出して
洗い物しようと
蓋を取ってみた。

何か入っている。
お残しかな?

お弁当箱の内側は
つるつると綺麗になっている。

しっとり濡れた細かな
シートの様な物が
お弁当箱の底一面に入っている。

「お弁当箱の中に
何か入っているけれど。」

大声で聞いてみる。

「あ。それ。
何だと思う?
匂いする?」 

私は少し摘んで
手のひらに乗せてみる。

花びらみたい。

「今日ね。
学校の桜が満開で
とっても綺麗だったの。

でももう散り始めていてね。

ちょっと風があったから
桜の花びらが
ちらちら
はらはら舞って
綺麗だったんだよ。

でね。
みんなで桜の木の下で
お弁当食べたの。

桜が薄ピンクで
風に舞っていて
すっごくすっごく
綺麗だったの。

でね。
みんな写メ撮っていて
お母さん達に
送っていたんだよ。

私のお母さん
目が見えないからなぁ。
って言ったらね。

そうだ!って
みんなと一緒に気がついて

私のお母さんに
見せてあげようよ
って言って
みんなで花びら
集めてくれたの。

それでお弁当箱に
入れてきたの。

みんなが花びらを
集めてくれている時に
急いでお弁当箱を
水道で洗ってきて
ティッシュで綺麗にして
花びら詰めてきたんだよ。」

シャンプーのいい匂いをさせながら
元気よく話してくれた。

「ありがとう。
お父さんにも
見せてあげようよね。」

桜の花びらが舞うお昼休み

女子高校生たちが
写メが見えない私のために
友達のお母さんのために
花びらを集めてくれた。

彼女たちの明るい笑い声が
聞こえてくる。
靴音も聞こえてくる。

優しいお友達に囲まれて
幸せな高校生活を
送ることができている。

私はありがとうの気持ちでいっぱい。

早くお父さんにも
触らせてあげようね。」

しっとり濡れているような花びら。

指先で触ってみるけれど
形とかよく分からない

お弁当箱の中の花びら
手のひらいっぱいに広げてみる。

うーん。
においはしないけれど。

この桜の花びら達
4月の温かさとそよ風と
のどかな女子高校生達
のランチタイムと
やさしい気持ちを
たくさん乗せてきてくれた。

花びらをお弁当箱に戻して
静かに蓋を閉めた。

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