2018年4月15日日曜日

入学式

いよいよ閉会の言葉。

高校に入れるか
心配していたけれど
県立の高校に
入学出来て良かった。

入学式のこの日

私は母と一緒に
保護者の席に座っていた。

式が終わって徒達は
それぞれ自分の教室に
戻っていく。

大勢の声と椅子の音が
体育館いっぱいに賑やか。

「今から呼ぶ生徒は
こちらまで来なさい。」

声の大きな怖そうな男性の先生。

マイクで増大された声は
怖さを際立たせている。

そして番号が
読み上げられている。

「あれ?346番って
もしかしてうちの1女?」

しばらく様子見に
座ったままでいた。

母に聞いても
もちろん分からない。

体育館では続けて
親たちへの説明が始まり出した。

説明会のあと
先生を見つけて訪ねてみた。

「あの番号を呼ばれた生徒達は
生徒指導部の先生から
お話を聞いていますよ。

生徒指導か。

「ね。1女、
髪の毛染めていた? 」

「あれ?どうだったかな?
綺麗だったで。」

入学式の時から
呼び出されて
生徒指導受けるなんて
先が思いやられる。

私は母と校門の所で
長い時間1女の出てくるのを
待っていた。

「あ。来たで。来たで。」
っと言うんで、
携帯でタクシー呼んで
またひとしきり待つ。

1女はまたふらふら
見えなくなってしまう。

長い時間待たされて
タクシーがくる。

学校にタクシーを
呼ぶ親なんていない。

タクシーがきても
本人が姿を見せず。

もう何もかも
うまくいかない。

時間ばかりが空回りだ。

母がいらいら。
私をタクシーに待たせ
しにいく。

もういいから。
帰っちゃおうよ
っと言ったけれど
今度は母がいなくなる。

すると1女が
ひょっこりタクシーに
乗り込んでくる。

「ばあちゃんは?」

また1女が降りて行って
やっと母を連れてきた。

やれやれ。
タクシー代が恐ろしい。

「な。頭が茶色でいいがな。
綺麗だで。」

タクシーの中で
髪の毛の色の事を
思い出した母は
もうとんちんかんなこと
言っている。

それでも駅で
ミスタードーナツに
3人で入った。

母がお金を渡すと
3人分トレーに乗せて
運んできてくれて
おつりを出した

「こりゃ。やるで。」

1女はありがとを言って
砂糖やミルクを
母と私にも入れてくれた。

「ばあちゃんにはね。
よもぎのとあんこのね。
お母さんの好きなのこれ。」

「その頭、綺麗だで。」

「うん。ばあちゃん。
この方が可愛いでしょ?」

二人の話は弾んでいた。

生徒指導部の先生が
全盲だったら
この子もいい子で
いられたのに。

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