いつもの電車で
いつもの並ぶ位置。
電車が入ってくると
必ず無言の手が
私の右腕を掴んで
ドアの前へと
誘導してくれる。
いつものように
ありがとうございます
とそちらの方を向いて
お礼を言う。
いつもの山手線の中
優先席の脇の扉の端っこで
立っている私に
無言の手が
肩をとんとんと叩く。
私が振り向くと
無言で腕を掴むと
空いた席に
誘導してくれる。
きっといつもの人。
肩の叩く位置が
一緒だから
男性か女性かも
分からない。
私は
ありがとうございます。
と言っ
ホームをゆっくりと
降りる階段を
杖で探りながら
歩いていると
急に背中のリュック掴まれて
無言の手が腕を掴み
降りる階段の手摺を
触らせてくれる。
とても助かる。
だけれど無言。
こんな時は
どちらを向いて
お礼を言ったら良いのか
困ってしまう。
私は一人歩きをしていると
無言の手達にずいぶん
助けてもらっている。
でも。でも。どうして
一言でいいから
こちらですよ。とか
言ってくれないのかな?と。
無言の手は
きっと親切な手だ
と信じて
体をゆだねている。
男女も年頃も何も
わからない無言の手。
みんな顔や着ている洋服
みんな平等に見る事が
出来ている。
せめて全盲の私は
声だけでも聴きたい。
声だけでも
話し方だけでも
その人の雰囲気
分かるから。
今、嫌な事件
聞くことあるから
無言の手に掴まれて
信じてついて行ったら
怖い事になってしまったら
なんてこと
時々考えてしまうこともある。
一人でも多くの
無言の手達が
声を出してくれるように
なってくれたら
と願うばかり。
そしたらもっと気持ち良く
お礼を言うことできるのに。
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