2018年4月5日木曜日

詩仙堂

入籍したばかりの私達。
新婚旅行は京都。
本当なら司馬遼好きの私達だから
寺田屋とか池田屋とかに
行ってみたかったのだけれど。

弱視の彼と全盲の私
どうやって旅行できるのか
不安だった。

京都駅前から
タクシーを1日借りれる
っというのがあって
それで移動することにした。

ドライバーの方のすすめで
目が悪いのだから
絵を見るよりも庭園なんか歩く方が
いいんではないかと言うんで
江戸初期の石川丈山とかいう人の
別荘だったという詩仙堂に連れて行ってもらった。

庭園が美しいっと言うんで有名とのこと。

「あ。本物の獅子脅しの音いいね。」

詩仙堂の小さな日本庭園を歩いてみた。

池を右手に見ながら
左には草木がたくさん植えられている。

足元は大きな石が埋め込まれているようで
隙間があったりで歩きにくい。

私は白杖で丁寧に足元を探りながら進んだ。

は散歩道らしく
人ひとり歩ける幅しかない。

少し前を弱視の彼は
結婚したてともあってか
恰好つけて白杖を持たずに
歩いて行っている。

知らないよ。
失敗してもね。

「右にすぐ池あるから気をつけて。」

本当に日本庭園ってのは歩きずらい。
綺麗な花が咲いているんだろう。

ばっしゃーん

「どーしたの?大丈夫?」

ほらね。
恰好つけて見えた気になって
白杖持たずにこんな足場の悪いとこ
歩いているんだから
池に落っこちゃうんだ。

恥ずかしいったらありゃしない。
タクシーに乗せてもらえないから
どうするのよお。」

池は大して深くは無かった様だけれど
ズボンの腿あたりまで
お尻もしっかり濡れている。

詩仙堂。
日本庭園内で喧嘩だ。

「タクシーに迷惑だから
さっさとここでズボン脱いで絞って。」

私はキーキー命令する。

のどかな春の日。
静かな詩仙堂の庭石に
じゃっじゃっ
と搾り出された水の音。

そして獅子落としの音。
まったくもう笑うに笑えないドジぶりだ。

恥ずかしくて恥ずかしくて
もう恥ずかしくて。

この時のこと
思い出しながら
今私は笑っている。

私はこのブログを書きながら
あんなにも恥ずかしかったあの時のこと。

面白かったって
過去を書き換えているところ。

過去は書き換えられる
ってことに気がついてきた。

長い時間経ると
恥ずかしことが
恥ずかしかったことに変わって

うまくいけば
それが面白かったことに
変わっていけるって
過去もあるってこと。


丁度今時分。
詩仙堂の庭園には獅子落としの音がしていて
お花も綺麗に咲いていることだろう。

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