2018年5月23日水曜日

ひでき

秀樹が亡くなったって。

小学生の頃から
デビュー曲「恋する季節」
だったっけか?

あの頃から大好きだった。

白い教会って曲が一番好き。

中学生の時
四谷の文化放送に
秀樹が来る!と言うので

弱視の友達と2人で
文化放送まで秀樹に
会いに行ったことがある。

もちろん道順なんても
分からないから
色んな人に聞きながら
文化放送を見つけた。

秀樹のファンらしい人達で
いっぱいだった。

弱視の友達は
そんなに見えるわけじゃないから
何がなんだか分からない。

そんで私達は秀樹と
握手したかったから
近くにいたお姉さんに
目が見えないけれど秀樹を
見てみたいと話した。 

そんなこんなしていたら
周りがわあぁ!!っと
声が溢れだして
その声が靴の音に乗って
向こうへ走り出した。

小さな声で私達の話を聞いていた
学生くらいのお姉さん達が
いきなり私達の腕を掴んで
走りだしてくれた。

私達も靴音を追っかけて
夢中で走る。

「あっ!きゃあ!!
ひできー!ひできー!」

「ひできー!ひできー!」

私も負けずに
黄色い声あげまくった。

さっきの小さな声はどこやら
黄色い声あげている。

どうやら放送局から
秀樹が出てきて
車に乗るらしい。

ファンがぐるりと
秀樹の車を囲む。 

少し先で車の扉が
バーンっと大きな音をたてる。

それでもお姉さん
人垣を掻き分けて

「ひできー!この子目が見えないの!
握手してあげて!!」

と、黄色い声で叫んでる。

弱視の友達を引っ張っていた
お姉さんも一緒に叫んでる。
 
「これ秀樹の車!
すぐ向こう側で秀樹が
手を振っているよ!

お姉さんの熱く燃えた手は
私の手をしっかり握って
窓ガラスに飛びつきながら
強く押し付けてくれる。

「ひできー!この子こんな傍にいて
顔見れないのよ!
握手してあげて!!
てあげてー!秀樹ー!」

窓ガラスをとんとん叩いている。

つるつるに磨かれていた窓ガラス。

私達が触れた途端に
車はゆっくり走り出した。

すぐ傍で男の人が
どいてください!!
あぶない!あぶない!
叫んでる。

「私達、秀樹の乗った
車の窓ガラス触れて最高です!!」

大興奮で弱視の友達と
お姉さん達の手を固く握った。

秀樹に見つめられたとか
優しい目だったとか
シャツの色がセンス良かったとか

隣の男の人はマネージャーかな?
なんてしばらく秀樹の事を
話してくれた。

秀樹のかすれた声は
とってもセクシー。
 
「秀樹はいつも綺麗な人ばかりに
囲まれているから
盲人の私達なんかには
声かけてなんかくれないんじゃないかな?

「恋人にはしてくれないけど
ファンだもの!握手はしてくれるよ。」
 
「そっか。恋人には盲人だもの。
無理だよね。」

「無理だよね。
秀樹に色んな事してあげれないもの。」
 
そんな事を言いながら
寮へ帰って行ったっけ。




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