2018年5月19日土曜日

見せて

やっとおしゃべりができるように
なってきた3歳の頃。

たどたどしい言葉は可愛らしいし
何よりもそのママ達は
うっとりして聞いている。

「何歳?お名前は?
何組なの?ご飯何がすき?」


目の前に子供がいると
様子の分からない全盲の私は
ついついあれこれ
質問してしまう。

ちょっと可愛い
その声を聞いてみたい。

目の見える大人達は
黙って笑いかけたり
手で何か仕草をしてみたりと
子供との距離を取りながら
関わっていく。

子供がぎゃあ!と泣き出す。

「ほら。すぐ触ろうとするから
びっくりするんだよ。
怖がっているよ。」

そんな風に何度も
言われてきたので

その子を触ってみたいけど、
手は出さずに
質問だけしてみる。


「3歳だよね。小太郎だよね。
ライオン組だよね。」


とそばにいるママが
全部答えてしまう。


ママに聞いたんじゃないでしょ?

子供は黙っている。
これじゃ言葉覚えないじゃあないの。
と声には出さずにいってみる。


先日、娘の友達
子育て真っ最中のママ友にあった。 


園子と夏太郎君3歳。

ここの家のママは
私からの質問に答えない方針。

「もっと大きな声で。何歳って!
おばちゃん目が見えないんだから
指で出してもだめでしょ?
お口でちゃんと言って?

「3歳。眼鏡すれば?」


夏太郎君
3歳なりに色々考えてくれる。


「ほらぁ。」
私がほらを触ろうと
手を出すと、さっと払われてしまう。

「ほらぁ。ほらぁ。」


目のすぐ前で何かを
見せているらしい。

顔を前へせり出すと
瞼に冷たい金属が触れた。

「目が見えないからそれ見せて?」


お願いの仕方が悪かった。

そう。
確かに見せてと言っていたんだ。


「それね!触らせてくれる?」


夏太郎君は彼なりに
ずっと私の目の前にかざして
見せてくれていた。


「あーぁ。車ね。バスかな?」


彼はやっと私の手の上に
トミカを載せてくれた。


「ほら!その白杖は
おばちゃんの眼だから
大事なの!遊んじゃだめよ。」

「これ釣り竿だよ。眼はここ。」
っと自分の眼をさす。


白杖を釣り竿に見立てて
上部の紐を垂らしてパパの真似。

今度は両手に持って高々とあげて
飛行機!っと叫んで飛んで行く。

「ほら!
おばちゃんの眼なんだから。」


この勝負あった。
夏太郎くんの勝ち。


全盲の人に会ったことないのだから
夏太郎くんの感性は正しい。
   
見せて!と言われたのだから
眼の傍にかざしてくれたし

長い棒持ったなら
そりゃ女の子だって
振り回したくなるもんね。 


しかもその棒が眼だなんて
訳分かんないよね。


想像もできないはず。


大人の人だって
眼の神経死んでいるんですよ
と言っても

眼鏡かけてもだめなんですか?
なんて聞いてくる人が
何人もいたから。

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