2018年5月1日火曜日

盲人ごっこ

「ででえっ!!良くおめえの事見てるがなあ。」


こたつで漬物の食べながら
ばあちゃん「私の母」が
手を叩いて喜んでいる。

襖を開けた向こう側の部屋で
小学生の娘達が仲良く遊んでいる。

「何しているの?」


こたつの所から声を掛けると
ドタドタ娘達の方からやってきた。


「すいませぇん!
お母さんのお家はどこですか?」

流しの方へ行ってみたり
お風呂場の方へ行ってみたりしながら
そばにきた。


「盲人ごっこしているの。」


3女は四つ這いになって
お腹にはどこで見つけてきたんだか
長い晒が巻き付けられている。

お姉ちゃんがその端を持って盲人役だ。 


「家の盲導犬お利口なんで、お手もできます。」


ばあちゃんが「おて」っと言うと
ちゃんとお手をする。


「おめえが歩く時のようによ。
こうやって、手前に出して歩いてんだで。」


ばあちゃんは大声で笑っている。
盲導犬がそばにくると
口の中におせんべやら
菜っ葉なんか食べさせては
面白がっている。

そっか。
この間、お友達に会った時
本物の盲導犬を見せてもらえたんだ

盲導犬はとてもお利口だ
と聞いて早速、娘達はお手やら 
お回りと声を掛けていたけれど
そういうことは出来なかった。

お利口な犬なのにお手が出来ないなんて
変だ!と後々まで話していたっけ。


今度の盲導犬はお姉ちゃんだ。
「私目が見えないんで、
乗せて下さい。」

何やらしおらしく頼んでいた
盲人役の3女が言っている。

お姉ちゃん盲導犬は
背中に3女を乗せてきた。


子供達もばあちゃんも
私がここにいるにも関係なく
盲人ごっこをして楽しんでいる

最初はえ?!っと
びっくりしたのだけれど
一緒になって私も笑っていた

「お店が分かんないんですけど。」
「お風呂屋さんはどこですか?」
「アイスはありますか?」


なんて言いながら
柱にぶつかったりとなかなかうまい。


「でっけー犬がいるがな!
あれがよ。おめえ乗っけて
駅まで行ってくれりゃ
えら(すごく)楽だんべがな。
煎餅食わねで、
はぁ(もう)行っちまったがな。」


子供達は盲人ごっこしながら
目隠ししたタオルの下で
何を見て、そして感じていたことだろう。

目をつぶっただけじゃ
見えちゃうからタオルしてもらおうっと
ばあちゃんの所にタオルを持ってきて
後ろ向きに頭を出していった。


目をつぶっただけじゃ
何かうっすらと見えてくるらしい。 


タオルをした目の奥。
真っ暗な世界。
いや。見えているから
真っ暗な世界があるんで
タオルで目を塞いじゃったら
感じられる空間は
両手を広げただけの所になっちゃう。

広い世界とは
知識でイメージした空間
のことだから。


もしかしたら
この遊びとても意味の深い
良い事なのかもしれない。

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