幼稚園が終わって
13時か14時。
7月の初めで、
猛烈な暑さだった。
全盲の私たちは
車にも自転車にも
乗ることが出来ない。
私の 住んでいる
隣町に、
現在子育て真っ最中の
全盲のママが住んでいる。
アスファルトが
今にも溶け出しそうな
その道を、
白杖を使って
片道20分程の道のりを
幼稚園まで
お兄ちゃんのお迎えに
歩いていく。
左手には、
やっと歩き始めた
2歳の子の手を繋いでいる。
帰りは4歳のお兄ちゃんと
疲れてしまっている
2歳の子を連れて、
家まで戻らなければならない。
2歳の子を
おんぶしたら
もう少し早く歩く
こと出来るけれど、
あの暑さ。
37度とか39度位も
あるかもしれない…。
子供はすぐにグズるから
お茶を飲ませて
騙しだまし歩く。
また、しゃがみこんで
お茶を飲ませる。
アスファルトからは
蒸気が噴き出している様。
時折吹いてくれる熱風。
ありがたいけれど
親子3人の血液も涙も
意識も蒸発させていく。
濡れタオルで
子供たちの首と顔を
拭いてあげてから、
また
ノロノロと歩いていく…
通り過ぎていく車は
暑さを煽る。
「どちらまで行くんですか?
こんな、暑い中危険ですよ。
警察の者です。
乗って行って下さい。」
冷たい冷たい車内からの
クーラーの空気が流れてくる。
もう家はすぐそこだった。
クーラーで冷やされた部屋に
3人、やっとの思いで到着。
3人でテーブルの横に
倒れ込んで、
ハアハアと息をはく。
「あ!お茶お茶!
飲ませなくては!」
ママはフラフラ
立ち上がり、冷蔵庫から
オレンジジュースに氷を
入れて持って来る。
「暑いのによく頑張って
歩けたね。」
汗でべたべたの
子供を膝に乗せて
子供のコップ持つ手に
自分の手を添えて 飲ませる。
傾いていくコップに
触れながら、生きてる。
”逆境は最大の宝なり”
と呟く。
ここで泣いたらダメだ。
あと30分したら
長男をまた
迎えに行かなくてはならない。
”逆境は最大の宝なり”
また呟いてみる。
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