2018年9月8日土曜日

朝のこと

小学1年生の私は2学期にはいって
いつものように通学班の中
並んで歩いていた。


すぐ前は赤いランドセルのまゆみちゃん。


稲刈りはまだだから稲穂が
わっさわっさと田んぼの中
お行儀よく何列にも並んで重詰めだった。


あれ?目の前のランドセルが黒い。
あれここ男の子の列の中。 
いつのまに?

前の黒いランドセル越しに
前の方を覗いてみると
ずっと遠くの方に
赤いランドセルの列がみえる。

私はびっくりして列から
離れて一目散に前の方の
赤いランドセルの列目指して 
走っていった。 

ランドセルの中がたごとと
ノート達が踊っているのが背中に感じる。

後ろで班長さんが何か叫んでいたけれど
私は赤いランドセルの列を目指して走り続けた。 

やっとやっと赤いランドセルに追いついたと思ったら
それは黒いランドセルだった。

おかしい。

さっきまで確かに赤い色をしていたのに。 

立ち止まって振り向くと
そこには班長の6年生のお姉さんが
怖い顔して立っていた。

大きな眼で、白い眼の所には
うっすら赤い線が透けて見えていた。

黒っぽい肌。
髪は短くて赤い色をしていて
くるんと巻いていた。

ツノを乗せたら
すっかり赤鬼だなと思った。

お姉さんは手に旗を巻きつけた棒と 
細い長いしのん棒を持っていた。

しのん棒は蜘蛛の巣をはらうために 
いつも持っているものだ。

振り上げられたしのん棒を見て
眼をぎゅっとつぶった。

左肩にぴしりと打ち下ろされた。 
胸はどきどきして
声をだすこともできなかった。

こんなことがあった。
何日か後。
私は黒板の字が見えなくなっていったんだっけ。

今から50年も前のこと。
だけれど覚えているあの稲穂と
赤いランドセルと班長の怖い顔。

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