2018年10月24日水曜日

切り取られた声

実家の左側の家は 
動物が大好きな家族。 

犬や猫、アヒルに鳥。 
虫を入れた虫カゴが 
5つもぶら下がっているらしい。 


「ねえ。あの、
ハフハフ変な 
泣き声みたいの何なの?」と 

実家への坂道を 
登りながら母に聞いてみた。

もう、何年も昔の事だけれど 
あまりの恐ろしさに 
まだ 
忘れることができないでいる。 
耳の奥にあの犬の 
声無き叫び声が聞こえてくる。

「この間だなんか 
うちの裏によ、亀は死んでるし 
鳥も死んでんだで… 
今の犬なんかよ。
可哀想だで。 
買ってきたばかりはよ 
良い犬でよ。 
母ちゃんが、よく散歩に
行っていたんだけんどよ 
今じゃ 
飽きちゃったんだんべな。 
うちのまえの洗濯物の 
竿によ、犬のヒモ 
繋いであってよ。 
そこんとこ、
行ったり来たりしてる
だけなんだで。

だからよ 
犬の足はよ、うんちだらけでよ 
ねんだよ。 
毛も抜けちまってよ。 
犬小屋がねえからよ 

夏のあんなにあつい日だってよ 
あそこにいるんだで 
かわいそうでよ。 

あの犬みるたびによ 
泣きたくなるで。
やせちまってな。 

こねえだ(この間)は 
だれもいなかったからよ 
ソーセージくれてやっただで」 

と母は言った。


なんと 
泣き声がうるさいと言うので 
術で声帯を
切り取ってしまったんだそうだ。 

なんて残酷なむごいこと
 
「お母ちゃんさ、 
犬のヒモ、
切ってあげちゃえばよかったんに。」
って言ってみたけれど。
 
そして 
さほど立たないうちに 
犬の姿は 
なくなっていたとのこと。

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