2018年12月7日金曜日

風船人間

胸の前に、手の甲を向こう側にして 
そろそろと前へ歩いていく。 

しょっちゅう買いに来ている
わらび餅のお店。 

JR駅構内にあるお店だから 
通路にカウンターだけをだしている。 

とても美味しいわらび餅なんで 
何人かの人たちが必ず並んで待っている。 

クネクネと誘導する
ロープまで張られているから 
人気のお店に違いない。 

この辺りから並んでいる人がいるかな? 
私も上手く最後尾に並びたいと
ソロソロと近づいていく。 

”フワリ”
あ!また。 あ!また。

”フワリ”と触れた洋服が逃げていく。 
風船と一緒。 

「最後に並ばれている方はどちらですか?」 

風船たちには口がなかったんだ。 

なんか嫌だな。買うの・・・。 
やめようかな。 

でも、お土産買っていかなきゃだし。 
また、ソロソロと前へ進んでみる。 

並んでいる人間達、
何かが触れたからといって
振り向いて見て、 
「あ!盲人だからどいてあげよう」と 
黙って風船のように、
”フワリ”と場所を開けてくれる。 

また、”フワリ”

私『あ!ごめんなさい。』

客「あ。いいですよ。どうぞお先に』

っと!やっと、人間に会えた。 

だけれど、
私はみんなと同じように
並んでから買いたかった。 

入りなんかしたくは無かったのに。

でも。
ま、いいか。大して並ばずに
買うことが出来たんだから。 

並んでいる風船たちの視線を感じる。 

そうだ!
支払い済んで、店から離れる時。 
風船の列に向かって、
『ありがとうございました』と
頭を下げてみた。  

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